近年、アスファルトやコンクリートに囲まれた生活を余儀なくされている東京などの大都市圏では、商業ビルの乱立による「緑の喪失」と「排熱」によって気温が上昇する「ヒートアイランド現象」が問題となっています。
夏場の最高気温は緑の喪失により1.4℃程度、排熱により0.4℃程度上昇しているとの調査結果もあります。夏場に急増している熱中症、消費電力が過剰に増えて電力不足が懸念される都市環境も、このヒートアイランド現象が大きく関係しています。
そんな中、注目を集めるようになったのが、建物の断熱性や景観の向上などを目的として、屋上や屋根に植物を植える「屋上緑化」です。
聖路加国際病院の屋上庭園、玉川高島屋のフォレストガーデン、六本木ヒルズけやき坂コンプレックスなどはテレビ等でも紹介されていますので、ご存知の方も多いと思います。
屋上緑化には、気温の低減などの熱環境改善効果、微気象の緩和効果、空気の浄化効果(CO2、NOx、SOxの吸収、粉塵の捕捉)、雨水流水の遅延・緩和、騒音防止などが期待できます。例えばビルの屋上を緑化した場合、緑化しない場合に比べて夏季の昼時には表面温度で約30℃低かったというデータもあります。
周辺の気温や湿度などの微気象の改善効果が重なり合うことで都市の気象状況の改善も期待できます。つまり、ヒートアイランド現象の緩和や都市の乾燥化の抑制に寄与することが可能になるわけです。
建物レベルで言えば、コンクリートの劣化を軽減する建築物の保護効果もあります。また、緑化を施した階下の部屋の室温が2.0℃程度低下したというデータもあり、冷房の省エネ効果も期待されています。
また、植物や水辺の空間は多様な生き物の生息環境となり、都市のエコアップにつながります。さらにオフィスビルや病院などでは、癒しや疲労回復などの心理的効果、生理的効果も生まれます。
このように、同一の空間でさまざまな効果が複合的に得られることも屋上緑化の特徴といえます。
ヒートアイランド現象とは
都市部の気温が郊外に比べて島状に高くなる現象のことをいいます。近年、大都市では夏に「ゲリラ豪雨」とも呼ばれる突発的な激しい雨が降って浸水することが多くなっていますが、この原因にもなっています。
ヒートアイランド現象の原因
アスファルトやコンクリート等の増加によって気温低減効果がある緑地が減ったことや、工場からの人口廃熱、構想建物の壁面による多重反射などで、都市が加熱されやすくなっています。
屋上緑化のメリット
大気浄化効果
大気浄化効果は、ガス交換によるものとフィルター機能によるものとに大別されます。大都市では、地上部分に新たに緑化を施すことは困難となっていますが、屋上緑化によって緑を増やすことによりこれらの効果が高まると期待されています。
省エネ効果
屋上コンクリート層から屋内への熱の流入量はほとんどゼロになり、エアコンなどによる冷房負荷の節減になります。
輻射熱の低減効果
高層ビルなどでは低層棟の屋上からの輻射熱の影響も受けます。しかし、低層棟の屋上が緑化されていれば、植物自体が蒸散しているために、緑化部分の温度はそれほど高くなく、輻射熱が少なくなります。
雨水貯留・遅延効果
土壌体積比で最大40%程度の雨水貯留効果があります。もう一つの効果である、雨水排水遅延は、植物体や土壌の層を水が浸透するまでに要する時間によって決まります。
建築物の劣化防止効果
昼夜の温度差と、それによって生じる伸縮により、屋上の押えコンクリートやアスファルト防水層などの建築部材は劣化が進みます。屋上緑化をすることで温度差をほとんどなくし、劣化を防ぐことができます。
屋上緑化のシステム
屋上緑化の方法とその選定
方法は、適用する建物の用途だけでなく、緑化目的、費用など施主あるいは設計者の要望などによって変化し、草本類による「平面的緑化」、草本類と木本類による「立体的緑化」、野鳥や虫などの生息空間を含む「ビオトープ緑化」の3種類に分類することができます。
セダム緑化
耐乾燥性の強いベンケイソウ科などのセダム類による、土壌厚35~70mm前後と非常に薄く、30~60kg/m2と非常に軽く、一般的には水遣りを必要としないローメンテナンス、ローコストの屋上緑化で、雨水の流出抑制効果、環境改善効果が期待できます。
薄層緑化システム
非常に薄型で軽量な緑化システムは薄層緑化システムとよばれ、荷重条件が厳しい建物でも維持管理の容易な緑化などの目的として開発されました。セダム類以外にも芝生やコケを利用したものがあります。
屋上緑化に適した植物
防風対策や軽量土壌などを用いて植栽基盤を確保すれば、たいていの植物を植えることは可能です。乾燥に強い植物として、セダム類、イヌツゲ、サザンカ、ハイビャクシン、ノシバ、コノテガシワ、マツバギク、ローズマリーなどがあります。
屋上緑化に使用する土壌
基本的には軽量土壌を使用し、人工地盤などでは改良土壌を使用します。それでも土壌厚が充分に確保できない場合では保水性の高い軽量土壌を使用します。現地発生土を使用する場合には検査を行い適切なものに改良する必要があります。
屋上緑化の導入コスト(費用)
規模、土壌厚、植物の種類などによって変化しますが、設計価格で、各々20,000~30,000円/㎡、30,000円/㎡程度から、40,000円/㎡程度から、とすることができます。
屋上緑化の助成金・補助金制度
助成金を受け取るためには、必ず工事前に申請が必要となります。助成の対象、内容及び条件などは、各自治体によって大きく異なりますので、リンク先でご確認ください。
維持管理とその留意点
潅水設備
自動潅水装置を使用して一度にたっぷりと水を与えてください。屋上緑化の自動潅水装置には点滴潅水方式や底面潅水方式が一般に使われます。広い面積になるほど、水道料金や、人件費を削減できます。
風対策
風速を低減するためには壁、防風ネット、常緑樹の外周配置、樹木の倒木防止には支柱材の設置、そして土壌の飛散防止には地被植物やバークチップによるマルチングなどの対策があります。このような対策は、計画・設計の段階で配慮する必要があります。
漏水防止対策
一般的には実績と耐用年数から、押えコンクリートのあるアスファルト保護房水が多いですが、軽量化や耐根性などの点からウレタン+FRP複合塗膜防水や防根シートと防水シートの2層防水工法とする方法があります。
植栽の抑制的な管理
屋上緑化では、成長ではなく植栽の安定性を重視するのがよいとされています。そのほうが維持管理作業を削減できますし、建物の許容荷重を超えそうになることを防止できます。
その他
壁面緑化の効果
緑化面を通過して建物壁に達する日射量は5%以下にまで減少します。これにより表面温度を下がり、空気に直接伝道される熱量(顕熱量)を減らすことができるため、ヒートアイランドの抑制に効果があります。
関連サイト
国土交通省 屋上庭園
国土交通省屋上庭園施設の概要、生物相の回復の実態などが掲載されています。期間限定の施設見学会のお知らせも。
東京都環境局 緑化の推進
東京都の推進する緑化計画制度について、制度の概要や手続きの流れ、条例、導入事例などが詳しく紹介されています。
東京都環境科学研究所
農業試験場、土木技術研究所と共同で実施した緑化によるヒートアイランド緩和効果の検証結果が掲載されています。
Copyright 2008 屋上緑化の四季